STORY
ストーリー
中3の夏。
医者から「もう野球はできない」と
言われたあの日は、
ざあざあ降りの大雨だった。
夢を失って抜け殻同然だった
主人公「岩瀬 祐樹」は
幼馴染の助けもあり、
なんとか受験を乗り越えることができた。
周囲に心配をかけ続けていたことを
反省した祐樹は、
高校生活に向けて、
一つの決意を固める。
「人生の目標みたいなもん、
新しく見つけねーとな」
「写真を撮ろうって思うと、
ステキなものを沢山見つけられるようになるの。
どうかな、キミの目には何が写ってる?」
底抜けに明るくて、やけに押しの強い
同級生に誘われるまま部活に入った。
「こんな朝っぱらに、こんな寂れたところで、
ギターを弾きたがるような人が
あたし以外にもいるなんてね」
古ぼけた親のギターを譲ってもらったら、
練習場所で仲間を見つけた。
「仕事を覚えていない人に
払う人件費はありません。
その気がないなら、シフトなんて
入れてもらわなくて結構です」
アルバイト先の同僚には
どうにも邪険にされているけど。
「自分が打席に立てなくても、
夢を託すことはできる。
ベンチから見る景色だって、
なかなか悪くないものだよ」
遠ざけていた野球にもう一度向き合う機会も、
マネージャーの先輩から
持ちかけてもらっている。
新しい出会いを重ねて、
やることならいくらでもあって、
充実した新生活を送る準備は万全。
その、はずなのに。
「あの日からずっと……
他のことがなんにも目に入ってない時の
岩瀬くんの顔、見てないんだけどな」
高校デビューを果たして
微妙な距離感にある
幼馴染の言葉が、胸の内を波立たせる。
いつの間にか移り気になった
自分に気づく5月の半ば。
雨の多い季節が近づく中、
小さな転機が変わりゆく日常の中に
姿を見せ始めていた。